Baselog:Labo

オタ活用。

明けないし眠れない夜

乾いた音をたてて爆ぜる焚き火を茫然と眺めていたら、幻聴がしてふと傍を見やった。あとものの数分で完全な夜の闇にのまれるだろう森の木々の合間からは、形容し難く不穏な気配がする。夕闇に包まれた森は静寂に包まれて肌寒く、そういえば、闇の中に亡霊を…

苦いコーヒーと灯し火。

街並みを華やかに彩る商店や露店の立ち並ぶメインストリート。商店街のなかでも比較的落ち着いた雰囲気の一角のカフェで、ゼパルとディディエは遅い昼食をとっていた。“花の国”フェンディル王国の首都ディルクール。芸術に栄える都市は街角も賑やかで、道ゆ…

素面で踊る(💚💜)

あれは何年前のことだっただろうか。スラムの片隅に、小さなステージが併設された酒場があった。マスターの男はとある盗賊ギルドの顔役を務めるかたわら、そのこぢんまりとした酒場を細々と経営していた。来る客といえばスラムの飲んだくれか薄汚い盗賊か、…

暑気あたりに冷や水

「まったく、最近の若いもんときたら、礼儀ってもんを知らなくて困るね!」 グエンは、目の前の男がやかましくがなりたてるのに気圧されそうになる自分をどこか遠くから眺めているような感覚に陥り、こぼれそうになるため息を堪えた。 思えば、今日は朝から…

ぬるいエールと返り血。

ゼパルは、赤黒く染まった上着を脱ぎ、目前に広げてみて、「これはもうダメだ」と悟った。 つい先ほど終えた、もとい失敗に終わったばかりの仕事は、ひとり商人の馬車の護衛だった。商人の名前はローズマン。近郊の街での仕入れを終えて、拠点の商人ギルドの…

初セッション前のフレーバーテキスト3種

もはやご愛嬌 ゼパルのフレテキ 金があれば自由になれると思っていた。スラムに産み落とされて盗賊ギルドの小間使いに奔走していた頃も、剣の師をえてひたすら技を磨いていた頃も、闘技場に放り込まれてくる日もくる日も闘いに明け暮れていた頃も、いつだっ…

ロックトリュフと豚の丸焼き

ニーヴロックの街の近場にある、名もなき森。以前、フードフェスタの新メニューである”エルフ風森のギューギューパン”開発のための食材探しに訪れたことのある、鬱蒼とした森だ。ニーヴロックからは小一時間ほど歩いた場所にあり、食用にできる植物やキノコ…

おやすみゼパル

<くじらの昼寝亭>は、ニーヴロックの街の大通りから脇道に入り、つづら折りの石階段をのぼりつめた先にある冒険者の宿だ。東側の窓が大きく開いているので、部屋からアレスタ海を一望することができる。静かな夜に耳をすませば、遠くに潮騒の音も聞こえた…

ニーヴロックの街にて

ここはニーヴロックの街、<くじらの昼寝亭>。つい今朝がたまで、3人はろくな食事も睡眠もとらず、希少な真珠魚を釣り上げるため、釣り竿を片手に海上で奮闘していた。その甲斐もあって、人の背丈かそれ以上はあろうかという目当ての巨大魚が、2匹も釣れた…

リバティの街にて

背中に鋭く突き刺さる視線を感じる。ザールは数歩先を行くディディエの、フワフワと左右に揺れる長い髪に目をやりつつ、ひそかに肩を強張らせていた。 共に荷運びの仕事を請け負ったはずの男が、その荷を持ち逃げした結果、信じられないような額の賠償金を請…